2022 AUTUMN WINTER COLLECTION
縞・馬・香
前回のシーズンは、ララガンのコンセプト 「亜魂洋才」 に改めてトライしたシーズンですが、亜魂洋才の精神は引き継ぎ、3つのキーワードから着想したコレクションです。
フォトグラファーの松原さんが 「シマウマの写真を撮りたいな」
という何気ない一言から想像を膨らませました。
まるで連想ゲームのように、私の頭の中で 「縞、馬、それと香り」
と想像を膨らませていきました。
日本の伝統の柄 「縞」、
前回のチェスの駒から派生した 「馬」
馬が悠々と駆け抜ける自然の 「香」
昔は仕事柄海外を飛び回っていたので、日本をよりよく知る機会がなかったため
大人になればなるほど、日本の素晴らしい文化に気付かされます。
幾何学は国境を超えて愛されてきた柄でありその中でも縞は様々な柄があります。
元々は筋と呼ばれていたそうですが、南蛮貿易で南方諸島産の縦縞の木綿が
もたらされてから、島の字を用いて、島物と呼ばれていたそうです。
江戸時代に粋だ! と大流行し、縞の字が当てられたとか。
海外の文化を日本らしく消化する、そういう精神をとても素敵だと思いました。
そこで、縞柄のデザインに着手するのですが、
縞の中でも三筋立縞をララガン流にアレンジしようと思い立ち、小さなイヤカフや、燻を効かせたリングが完成しました。
シマウマ柄のピアスとネックレスは
私の想像を形に落とし込むのに壮絶に難しく、何度も作り直しましたが、
最後には職人が抜群の集中力で掘り上げてくれました。
壮大でプリミティブさもあり、モダンな仕上がりになったと思います。
香りは、記憶を呼び覚まして、感情を揺さぶることができるものだと思っています。
情景が目に浮かぶ、その瞬間、自分の香りも混ざり、特別な時間になる、そんな香り。
市販の香水は完成されすぎていて、もっと自分の香りだけになるような
唯一無二なものを作っていただける柔軟な発想を持つ調香師の方を、二年間、探し続けていました。
ご縁があり、 「かほりとともに」 の沙里さんの香水販売会にお邪魔した際、 本物の石をそのまま蒸留した香りや、森の香りなどを作られていて衝撃を覚えました。
私が出会いたかったのはこの人だ、と思い、厚かましくもその場で
すぐにご依頼させて頂きました。
私の話を、沙里さんは鈴の音のような清らかな声で、 「うんうん」 と聞いてくださって、
人柄とその人の作り出すものはリンクするのだなあと改めて思いました。
トップノートに月桂樹やマンダリンなど、
ベースノートは石、沈香木などを入れています。
ミドルノートを敢えて入れず、ご自身の香りと混ざり
独自の香りになるようにデザインしています。
練り香水のケースには、私の好きな禅語 「喫茶去」 と堀入れてもらいました。
いつも余裕がないですから、、、これを見て一息つこうと思うのです。
今回のルックは、香りを感じる写真にしたいと、またもや無理難題を松原さんに押し付けたのですが、圧倒的な懐の深さで素晴らしい写真を撮影してくださいました。
つくづく格好の良い女性だと思います。
“ヘアが主人公のルック” にしたいと、
敢えてメイクはせず、KENSHINさんにヘアをお願いしました。
自由自在に、かつ繊細に仕上げてくださいました。
ここ暫くは、アジア系のモデルさんにご依頼することが多いのですが、今回は柔らかくて風になびく髪を持つ
美しい馬のような佇まいのモデルElenaに参加してもらいました。
メインルックは、黒背景と白背景を縞柄(ストライプ)
にレイアウトしています。
自然が起こした風と、自然の中に佇む馬、香りを感じられるもの
そういった雰囲気を、新しいニュアンスで表現できたのではと思っています。
⻄洋、アジアのエッセンスと日本の職人の技術を織り交ぜて、新しくも⻑く愛せる、
それでいて個の個性を生かせる余白のあるジュエリーが作れたら。
人々の人生の瞬間をジュエリーで彩れたら、と願っています。
2022年3月8日
R.ALAGANデザイナー 高橋 れいみ