2026.01.12
2026 SPRING SUMMER
装身具
ジュエリーとは、心の容れ物。
あるいは記憶の器、固形の約束。
とにかく、ただ変わらないでいてくれるもの。
身につけてさえいれば、
あの日の自分と共にいられる、魔法の道具。
だれも信じられないときも、愛されていないと感じるときも、
ほんとうにこの世にひとりぼっちであるときでさえも、
ただ静かに共にいてくれるもの。
自分の存在が、
ちゃんとどこかへ繋がっていると証明してくれるもの。
花は枯れます。愛は朽ちます。時は流れ、ひとは死にます。
それでも、それらがたしかにあったことを、
きっとジュエリーだけは知っている。
この世に私がいなくなって、私を知っているひとすら
ひとりもいなくなっても、それでも私がいたことを、
きっとジュエリーだけが覚えている。
そう思わせてくれるもの。
永遠と、瞬間とを、おんなじところに
閉じ込めてくれるもの。
ジュエリーを見つめているときだけしか
会えないひとがいる。
もうどこにもいないひと、
それはたとえば、あのひとを好きだったときの私。
ただまっすぐに、目の前の今を信じていたときの私。
いつだって私だけは、私と共にいたんだと、
思い出させてくれるもの。
どんなときでも煌びやかで、力強くて、完成していて、
立ち止まるなんてばかげていると言わんばかりに
あっさりと、時を超えさせてくれるもの。
Written by 俳優、文筆家 紅甘

